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室町期農村の急所訓練(第1話)

2010.06.17
   室町期農村の急所訓練(第1話)

 ここは、室町時代の山奥の寒村。
守護大名もこんな田舎には興味がないのか、公の仕事は地頭が取り仕切っている。
とは言っても、その地頭も室町幕府内ではそれなりの地位にいるらしく
京に屋敷を構えて、常駐している。
なので、ここは年貢米さえ納めれば、百姓の自治が保障されているような村である。

 しかし、最近では、国内で守護大名の家督をめぐって戦が頻発しているという話も
村人の耳に入っている。
こんな山奥の村は滅多に戦などに巻き込まれないが、国内での治安の乱れは
山賊・盗賊の増加へと、つながってくる。

 そこで、この村では自警団が組織されている。
自警団に入るのは男ばかりではない。
人口の少ない、この村では普通に女も子供の時から武術の訓練を受け
自警団に加わっている。

 年齢層別に訓練の場所は別れており、
まだ若い連中は森川神社のけいこ場で訓練をしている。
もちろん、男女合同の訓練である。

「おはよう!」
「あ、おはよう」
元気良く話し掛けてきたのは、一ノ瀬雪で
それに答えるのは、村の若い衆の中でも特に大柄な中嶋佐吉である。
お雪は名前の通り、美しい白い肌の持ち主であるが、
美しいのみならず、同年代の若者の中では最も強い。
もちろん、個々の運動能力で勝負すれば、中嶋佐吉などに敵うはずもないが、
この村での訓練は常に実戦を意識している。
お雪は長く白い美しい足を生かした金蹴りで、村の男を相手に勝ち続けているのである。
金玉を蹴られてうずくまる同い年くらいの男の子を見るたびに
お雪は『女に生まれて良かった』と心から思う。

 この神社で訓練をするのは、男5人と女2人で計7名である。
ただし、現在、戸川月は遠方に奉公に出ているため、
実質上、女はお雪、1人だけである。

なお、中嶋佐吉は村で1番大柄な若者と言われているが、それはこの7人の中で
1番大柄という意味であって、少し離れたここよりも大きな村へ行くと
佐吉などよりも、ずっと大きな男が何人もいる。

 同じように、村で1番木刀が強いと言われている豊橋彦三郎、
村で1番相撲が強いと言われている田島平助、
村で1番の力持ちと言われている木下権兵衛、
村で1番辛抱強い兼山与平などがいる。

 また、前述した通り、いくらこれらの男たちが強いと言っても
男の急所を攻撃してくる、お雪の前には無力であった。
大きな村に住んでいる屈強な若い男でも、お雪の急所攻撃には敵わないであろう。

 今日も、ここのけいこ場に集まった男たちはこれから受ける地獄の苦しみを知りながら
ここまでやってきたのである。

はじめに

2010.06.16
 このブログでは、古代から室町時代・戦国時代辺りまでの
小説を書いていきたいと思います。
特に、室町時代の小説はほとんどないですから
頑張りたいと思います。